ディノツナ総集編!





ディノツナ総集編(2005−2007)
RE PRINT D27


SAMPLE




[ first class love ]




「わーっ!綺麗ですね、ディーノさん」
遠ざかる東京の夜景に感嘆の声を漏らしたツナは、
齧り付くように四角い窓の外を見ていた。
初めて乗った飛行機はファーストクラスの
貸し切りで、行き先はミラノだった。

夏休みにディーノと二人きりで過ごすバカンスは、
イタリア観光と、マフィアのボスとしての社会見学の
両方を兼ねていた。四六時中ディーノがツナの護衛に付く
という条件でリボーンが二人の蜜月のような旅行を許したのは
彼らがジャンボジェット機に搭乗する三十分前のことだった。







[ 蒼い眼をしたひと]




空港についてからディーノの予約した高級ホテルのロイヤル
スウィートに着くまで、ツナが覚えているのはどこかでかもめが
鳴く声と、塩気交じりの温かい風だけだった。
あまりの疲労に眼を開けることもできなかったツナは、ディーノの
腕の中で横抱きになる形で市内を移動した。

と言ってもツナが外気に触れることを許されたのは、空港の玄関から
タクシーまでと、タクシーからホテルのVIP専用入り口までだった。
しかも、この日は要人の極秘入国ということで空港は閉鎖、
ホテルはキャバッローネファミリーに丸ごと貸切だった。





[ 離さない]




十八歳の誕生日、ディーノさんが俺にくれたプレゼント。
それはシルバーにダイヤモンドをあしらった、いかにも
高価な指輪だった。渡された時はそれが何か分からなかった。
けれど、蓋を開け深紅のクッションの間に鎮座していたリング
見た数秒後、反射に俺の眼から零れたのは・・大粒の涙だった。

「・・すみません、こんな素敵なの・・」
ありがとうございます、と直ぐ伝えることができなかった。
なんだか照れくさかったのだ。だって、ドラマの出来事
みたいじゃないか。・・誕生日に、婚約指輪、なんて。





[ 恋という名の病 ]




美術の時間にカッターナイフを滑らせて指を切った俺は、
右手の人差し指を押さえて、保健室に向かった。
大き目の絆創膏をもらおうと思ったのだ。
閑散とした廊下を抜けて保健室のドアを開けると、
奥の椅子に座っていた白衣の人物がくるりと正面を向いた。
それはいつもの仏頂面の無精髭ではなくて・・
「・・ディーノさん!」
 俺がその名前を呼ぶと、彼は椅子から立ち嬉しそうに微笑んだ。
「よっ、ツナ!・・怪我でもしたのか?」
 心配そうな彼の蒼い眼が近づいてきて・・
俺は目の前の状況にパニックになった。
「・・な、何でディーノさんが・・」
「俺が診るんじゃ不安か?ツナ」





[ 櫓立ち ]




定例のマフィア会議が終わると、ディーノさんは
俺の肩をぽんぽん、と叩き「よく頑張ったな」と微笑んだ。
「そんな・・ディーノさんのおかげです」
 マフィア用語も、イタリア語もよく分からない俺が
マフィア会議に出席出来るのは、例のスパルタ家庭教師の
鬼のような授業と、彼――ディーノさんのきめ細かい指導
によるところが大きい。俺がディーノさんに心から感謝の
気持ちを伝えると、彼は何かを思いついて微笑んだ。
「あ――そうだ、ツナ・・これから時間、空いてる?」
「時間――ですか?」





[ 時雨茶臼 ]




「・・どうして、無茶なんてしたんですか」
 青く刺青の描かれた左肩に、締め付けすぎないように
気をつけて包帯を巻く。その様子をじっと見詰めていた彼に尋ねると
「ツナに会いたかったから」
お決まりの答えが返ってきて俺は、ため息をついて
傷口をわざと、小さく叩いた。
「痛っ・・ツナ、優しくしてくれよ?」
 ディーノさんは眉を顰めてかがみ、救急箱を片付ける俺に
キスをした。擦り傷のある頬が近づいて胸が、切なくなった。
――こんな姿になってまで俺に・・会いに来てくれるなんて。
 貪るように俺の唇を吸う彼の金色の髪に指を絡ませながら俺は、
空港まで彼を迎えに行かなかったことを死ぬほど、後悔していた。




[ ラブ&ゼリー]




 予感はしてたんだ。朝起きた時、目覚ましは止まっていたし
(幸い今日は祝日だった)家を出たら黒猫がこれ見よがしに横切った。
茶柱は目の前で沈み、靴の紐は突然切れた。
――てんびん座は厄日って言ってたし。
 そう思いながら静かな(チビ達は外出中、リボーンとビアンキは仕事だった)
リビングで背筋を伸ばしたら、腕を下ろした瞬間にチャイムが鳴った。
インターホンで来客を確認すると
「久しぶり、元気だったか?」
 元気な優しい声が返って来た。玄関に立っていたのは大きな
花束を抱えた、ディーノさんだった。




[ プレゼント]




同盟関係にあるボス同士の会談は週一単位で行われていたが
多忙な第三勢力にあたるマフィアのボスとは月に一度会える
ことができればよい方だった。
ボスの座について二年。その責任と存在の重さを痛感していた
ツナもさすがに最愛のひとに「会いたい」と駄々をこねることは
少なくなっていた。無事であるかは、最強のヒットマンを介せば
すぐに分かる。でも、表情を見ないと元気であるかまでは分からない。
専用の回線なら電話はどこでも繋がるが、ディーノの多忙さを
考慮したツナは極力短縮ボタンを押さないようにしていた。
そんなツナを慮ってか、ディーノも危急の用事以外は、
衛星電話に一番に登録した番号を押さないようにしていた。
お互いの立場と、属するファミリーを思えば・・
お忍びと呼べる愛も当然のことだった。




収録作品



*最高で最低の休日(「君の住む街で」より、再録)
*金色のしっぽ(無料配布本)
*初恋と魔法(無料配布本)
*69(チラシ)
*光に届くなら(サイト)
*my sweet pollow (サイト)
*免罪符(サイト)
*秘密のねがいごと(ゲスト)
*書き下ろし(少し)



ディノツナ総集編 R18 

RE PRINT D27 / A5 / 60P / 200円 
2008年1月13日 comic city 大阪にて発行(予定)