彼が日本に来ている、と聞いたとき
真っ先に会いたいと言ったのはツナだった。
「奴だって、遊びに来てるんじゃないんだぞ」
と、リボーンにたしなめられたものの
「だってディーノさんに見てもらうと・・
宿題が早く済むんだもん」
とツナは駄々をこねた。
勉強を見てもらいたい、というのはもちろん
こじつけで、ツナは彼が日本にいる間は
少しでもそばにいたいと思っていた。
忙し身のキャバッローネのボスは、わがままな
弟分の願いを聞きつけ、すぐに真っ赤なフェラーリを
乗り付けてやってきた。
そのすぐ後ろに、黒服のボディガード達が
乗り合わせたベンツを引き連れて。
『 monopoly killed the cat 』
ごめんなさい、と最初にツナは謝った。
仕事で、しかも大事な取引のために直々に
来日した彼をわざわざ自宅まで呼びつけてしまった
ことを、である。
「ツナの勉強を見る」という単純明瞭な理由で
滞在先のホテル(所在は極秘らしい)を飛び出した
ボスを、ボディガード達は慌てて追いかけてきた。
彼らの役割はボスを守ることであるから、ツナの自宅
四方50kmは、ボスが着いてから交通規制が敷かれていた。
勿論ツナは自分のささいなわがままのために、ご近所に
多大な迷惑をかけていることを知らない。
「別にいーぜ、可愛い弟分の望みならな」
イタリアからでも駆けつけてやるよ、と白馬に乗った王子のごとく
彼は微笑む。
「ディーノさん・・」
ツナは感激で胸がいっぱいになったが、彼とその周囲に
過分な迷惑をかけていることは重々承知していたので
すぐに宿題を差し出した。
宿題を見てもらって、ちょっと話をしたらすぐに彼に
ホテルに戻ってもらおう、とツナは思っていた。
ほんの少しだけ顔を見て、話ができればいいと
思ったのだ。
「よし、英語の読解がわかんないんだな」
ディーノは腕まくりをすると、ツナの向かいに座って
ふんふんと教科書を読み始めた。
彼からすれば簡単すぎるような文章をまじめに読むその
姿に、ツナはこの宿題が永遠に終わらなければいいのに、と
さえ思った。
<続く>