ディーノはツナから引き抜いたひと指し指と
中指を口に入れ、内部の味を確かめるかのように
舌を這わせた。
薄く眼を開けたとたん、彼と眼が合ったツナは
その絡みつくような視線に息を飲む。
優しくて綺麗でおとぎ話の王子様のような兄弟子が
ツナには、たった今初めて会ったような人物に見えた。
「ディーノさん・・」
初めて見る、彼の真剣な表情にツナは不安そうに
声をかける。彼がとても・・遠くなってしまうような
感じがした。
ディーノはそんなツナを見やると、再びにっこりと微笑み
耳元で睦言を囁いてから、ツナの唇を自らのそれで閉じる。
誤魔化されてしまったような気がしたものの・・ツナは
絡み合う口腔に気を取られて、先刻の彼の表情を忘れてしまった。
「あぁっ・・ディーノさ・・熱い」
自分の後方に押し当てられた塊に、ツナが悲鳴に似た声を
挙げると、彼は幼い子供をあやすようにツナの髪をなで
少し大きめの耳たぶを口に含んだ。
慣らしたとはいっても、指とは太さも大きさも倍以上の
物体がじわじわと自分の襞を広げ内部に侵入する――
ツナの胸は、得体の知れない恐怖感でいっぱいになった。
「やだぁ・・もう。できない・・ディーノさん」
ついに根を上げ、ぽろぽろと泣き出したツナは
頸を横に大きく振り彼を拒絶した。
13歳とはいえ二次性徴も十分でないツナの身体に
ディーノの欲望は大きすぎたのだ。
ディーノは侵入を止め、自身を引き抜くと
しゃっくりを上げて震えるツナを両手で抱きしめる。
「怖い思いさせてごめんな・・」
ディーノとて、ツナを泣かせ苦しめるために
この家を訪れたわけではなかった。
日本に来たら、まず一番にツナの顔を見たかったし
その柔らかい唇に触れたら、誰にも渡したくなくなった。
それはおそらく、マフィアのボスとしてふさわしくない
感情に違いなかった。
彼は、これまで会ったどの女にさえ抱いたことのない
独占欲を持て余していた。それは――焦りも生んだ。
「ツナを・・愛してるんだ」
押しつぶされるくらい固く抱きしめられたまま、
頭の向こうで聞こえた小さな言葉。
それは祈りにも似た響きで、ツナを取り巻く薄黒い霧を
追い払う。
――開けた視界の先に、笑う彼の横顔が在るような気がした。