7
二人で一つの部屋を共有すれば、することはたった一つだった。
恋人を置いて上り詰めた俺を、彼は呆れたような瞳で見下ろした。
まだ充分な硬さを持った彼の一部が、俺の中で熱を持て余している。
「何時になったら、お前は加減って奴を知るんだ」
だって、と俺は息を吐きながら答えた。
先に一人だけ達してしまうのは恥ずかしくてはしたないことだと
分かっていたが、リボーンと一度始めてしまうのはブレーキのない車で
高速道路を走りぬけるようなものだった。
「・・気持ちいいんだもん、我慢できない」
「ボヴィーノの牛みたいなこと言うな」
相変わらずの皮肉と共に、少しだけ疑いの眼が向けられていることに気づいて
俺はわざとらしく頸を振った。
真っ黒な瞳に心まで射抜かれる前に、何とか誤魔化したかった。
「――もういいよ、早く抜いて」
「まだ始まったばかりだろ?さんざん獄寺に強請るじゃねーか」
「・・!」
内部を確かめるように、繋がったところを押し付けられ俺は突き上げられる快楽と
広げられる苦痛に眉を歪めた。
入れられたリボーンのそれは、俺を詰問する熱い杭になっていた。
「山本の時は確か・・お前が上だったな」
今度はお前が動くか、と囁かれ彼の熱い息と悪戯な腰の動きに一度沈んだ俺の一部も
また息を吹き返す――突き乱しかき回す彼の動作に、呼応するかのように立ちあがる
それは、直ぐに我慢の出来ない先端を濡らし始めていた。
「やだってリボーン・・、こんな・・っ」
彼はいつだって熱くて冷えたままなのに、俺だけが駆け上がってしまう。
ちゃんと一緒に感じたいのに――彼が快楽に酔う姿なんて
俺は見たことも、聞いたこともない。
「お前が、悪いんだぞ?」
彼は俺の膝の後ろに手を入れ、両手で大腿を持ち上げた。
もう弾けてしまいそうな俺と、根元まで入った彼をまざまざと見せ付けられ
――思わず俺は、両目を顰めて顔を背けた。
リボーンの言葉すべてを、根拠のない嘘と否定するかのように。
「知らないとでも思ってたのか。本当にお前はダメツナだな」
彼の先端が当たる俺の内部は、擦り上げられると悲鳴を上げる繭だった。
はき切れんばかりに膨れた俺の尖塔を握り締めると、この上もなく楽しそうに彼は微笑んだ。
「や・・だ。イかせて・・お願い、リボーン・・!」
「お仕置きも嫌いじゃないんだろう?雲雀と楽しんでたじゃねーか」
持て余した体の熱を冷ますかのように零れた俺の涙を、彼は紅い舌で器用に舐め上げた。
迸る瞬間まで上り詰めた先端をやわやわと揉み解され、爆発しそうな快楽が俺の脳裏に逆流する。
「あぁ――っ、は・・あ、んっ!」
「悪いが俺は、ディーノみたいに甘くも、優しくもねぇ」
どうして彼が俺と――彼らの密会の一部始終を知っているのか
並べ上げられた名前に頸を振りながら、俺は靄のかかった記憶を模索した。
会ったことはばれていたとしても、ベッドの中まで知り尽くされているのは衝撃的だった。
痺れるような感覚に仰け反る背筋を駆け上がるのは、恐怖と血も凍るような戦慄だった。
舌先をだらしなく垂らす口腔から洩れた掠れ声に笑みを零すと
彼は照明の消えたベッドサイドに手を伸ばした。
右手には、果てるしか選択肢の無い俺の肉欲を。
左手には、愛用していた護身用の銃を。
「お前は・・どっちの天国に行きたいんだ?」
汗が滲むこめかみに突き当てられたのは、硬質の紛れもない鉄の塊。
言葉にならない返事を叫んで、俺は白くて角ばった手の平に白濁を吐き出した。
答えは、たった一つだった。