会議室からぞろぞろと出ていく幹部達を見送ると、リボーンは書類を
束ねていた俺をいきなり後ろから羽交い絞めにした。
磨き上げられたテーブルに出っ張った腰骨が当たり
抗議の眼で背後の男を睨むと、彼は艶のある漆黒の瞳を僅かに細めた。
「・・離してよ、リボーン」
延々三時間も続いた恒例の幹部会議は、互いの腹の内を探り合うだけでも
十分な時間と神経を浪費した。
実にならない駆け引きで煮えきった頭を冷やすため、俺は何か冷たいものでも
飲んでから直ぐにでも自室で横になりたかった。
「じぃさんの顔ばっかりで、お前も飽きただろ?」
太腿の内側に厚い塊を押し付けられて、俺は思わず腰を引いた。
彼の言わんとすることは痛いくらいに分かったが、同じ面子の顔色を見続けることと
それは、全く別のことだった。
「そんなの――関係な・・」
異議を唱えた唇を、熱い彼の舌がこじ開け――乾いた内部を蹂躙する。
絡み合った唾液を思わず飲み込むと、俺を見つめる真っ黒な眼が笑った。
「・・もう、立ってるぞ」
確かめるように、スーツの上から先端を握られ俺は思わず視線をそらした。
イタリア語と英語の混じる攻防はそれだけでもストレスと疲労を蓄積させた。
会議の資料作成に向け、数日前より本部に泊り込んでいた彼と俺は
――しばらく、ご無沙汰だったのだ。
「だって、リボーンが・・っ」
異論を告げようとした俺の唇を啄ばみながら、彼は左手で器用に
ズボンのチャックを下ろし、既に棒のようになっている俺をやわやわと揉みしだいた。
下腹部から湧き上がる熱に、疲れと虚脱感ですでに痺れていた俺の脳髄はいっぺんに
理性を床まで突き落とした。
彼も――俺がすぐにそうなることを、想定していたのかもしれなかった。
俺は腰を回して彼と向き合うと、その両肩を押し――革張りの議長席に腰を下ろさせた。
先程まで自分が暖めていた椅子に座った彼の上に乗り、細くて白い頸に腕を回して
キスをすると、彼は俺のズボンを膝下まで下ろし、シャツの胸元を開いて浮き上がった
鎖骨を舌先でなぞり上げた。
「・・後悔しても、知らないからね?」
彼の大腿の内側にそそり立つ尖塔を俺が握り締めると、彼は汗の引いた首筋を舐め上げ
少しだけ大きい俺の耳たぶを甘噛みした。
「今日はお前が満足させてくれるんだろ?」
「リボーンが奉仕してよ。俺・・疲れてるんだから」
首筋に呟いておねだりすると、肩の向こうの彼の気配が薄く微笑んだ。
「望むままに、と言いたいが――手加減できないからな」
「じゃあ、手は抜かないでね?」
シナリオのない駆け引きは始まったばかりだった。
互いの舌を絡み合わすことからスタートするゲームは、白と黒のテーブルが並ぶ
窓のない部屋でひっそりと幕を開けた。
革張りの議長椅子が軋んだ音を立てるころ――ツナは、自分を押し上げる男が
恍惚とした憂いを眉に寄せるのを見て僅かに微笑んだ。
負けるが勝ち、とはこういうことだと思った。