どんなに豪華なホテルのスウィートだって
君がいなくちゃ、意味がない。
『 共演者 』
その日のツナは不機嫌だった。窓の外の透き通るような空の青。
浜辺を渡る心地よい風。天蓋つきのベッドに広がる、純白のシーツの海。
舞台はいくらでも揃っているというのに、肝心の役者が揃わない。
「・・だってリボーンが休暇取ってくれるっていったから。
わざわざ無理言って、会議ずらしてもらったんだよ?」
ふてくされて頬を膨らませたボンゴレ10代目は、おおよそ
23歳とは思えない姿をシーツの上で晒していた。両唇を尖らせ、
眉間に皺を小さく寄せて両腕を組んで横向きに寝ている
――いわゆるふて寝、というやつだった。
「仕方がないだろう。敵だってこっちの思うとおりに
動いてくれるわけじゃないんだからな」
どんな理不尽な苦情も、可愛いボスの言うことには
逆らえない。リボーンは、ため息をつきながら――ヒットマンの
職につく運命として、現在の状況を弁解した。
「――始末したら、すぐ戻る」
「・・やだやだ・・リボーンの馬鹿っ!!」
二人きりの時間を一週間ぶりに確保したのだ。
今日を逃すと、また何日も会えないかもしれない。
幹部に無理を言い、この日のため日々の退屈な仕事を
必死でこなしてきたツナは珍しく――盛大に我儘を
言った。
リボーンを困らせることになってでも、子供じみた所業と
馬鹿にされても・・彼のそばにいたかった。
「もういいよ。・・リボーンなんか知らない」
そう言い放ったツナが――誰か彼の代わりにこの部屋に
呼ぼうと傍にあった携帯電話に手をかけたときだった。
刺すような銃声と共に、ツナの手の中の携帯電話が
木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「何するんだよりボーン・・危な――」
そういいかけて起き上がったツナの眼の前に
あったのは・・いつもより熱の篭った、漆黒の瞳だった。
その焼け付くような視線に、続く言葉を失ったツナの
唇を・・リボーンのそれが覆った。
まるで――代理は無用、といわんばかりに。
「・・1時間で戻るから、おとなしく待ってろ」
何度か口付けを重ねてから囁かれた言葉に、優しい
口付けに半ば夢ごこちになっていたツナは――おとなしく
頷いた。
「早く帰ってこないと、一人で始めちゃうからね?」
キスで身体ごと黙らされ、言いくるめられて・・ツナは
悔し紛れにそう言ってリボーンを見送った。
「俺以外で満足できるなら、誰でも呼んでやるよ」
振り返った彼の、皮肉の篭った笑みにツナは耐え切れずに
俯き・・閉じたドアに向かって枕を投げつけた。
どんなに溶けるようなベッドの上にいても、
君がいなくちゃ意味がない。
どんなに、だれかの体温が恋しくても・・
君でないと、温まらないんだ。
(ツナ受オンリーで多大なる迷惑をかけたYさんに捧げさせてもらいます・・!!)
(さりげない独占欲を示すリボツナ、こんな感じでよろしいでしょうか?)