景色
頂上の景色を見せてやると君は言った。
最高の酒を飲み絶世の美女を抱き、世界のすべてが眼下に額をこすりつける
――そんな、至高の場所へ。
君の笑みに誘われて俺は踏み出した。
殺人、麻薬、売春、密輸、普通に生きていれば関わることのない
出来事がすべて、日常茶飯事。
毎日のように人が死ぬ、見送ることもできない。
人間が他人を当たり前のように裏切る。ボスは引き金を引くだけ。
・・リボーン、俺は君についてきたよ。
君の言うとおり、約束どおりボスになった。
・・なったんじゃないね、ボスの座席に座った。
みんな知ってるよ、俺がただのお飾りに過ぎないこと。
ボンゴレの血だけで相続権を得た、何も知らない日本人だってことも。
だから俺は「十代目」と呼ばれる。
ファミリーの家督「ボンゴレ」では呼ばれないんだ。
ねぇリボーン、信じる・・なんて言ったら君は鼻先で笑うかもしれない。
茶化してまともに聞いてはくれないかもしれないけど、ほんとは
君のそばにいられればよかった。
折り重なった屍の上だって、太陽より赤い血の海深くだって
誰に裏切られても、何を失っても
最後の世界を瞳に焼き付けるときこの両手が緋の海でも
君が見せてくれる景色なら俺は、そこがたとえ地獄と呼ばれる
場所でも後悔などしない。
君が俺を馬鹿にする日々を送り通せるなら
どんな辛酸を舐めてもよかった。
君のはかりごとの上で生きていけるのなら
どこでも・・よかった。