本音と建前を使い分けることが出来るのが大人なら、俺はもう大人の世界の
仲間入りをしたことになるのだろうか。リボーンと付き合うようになってから
マフィアのボスの座についてからそんなことをふと、思う。以前リボーンにそんな
話をした時は「お前なんてまだまだだ」と鼻で笑われた。少し、悔しかった。
「それは・・君から見れば俺なんてまだひよっこなんだろうけどさ」
「ひよっこも何も、生まれてもいねーよ」
「・・そこまで言う?」
「自覚はあるだろ」
 ぐうの音も、出ない。
 俺が彼に叶う部分も、優れた部分も何一つ無いのだ。すべては彼の裁量次第。
その小さな、とてつもなく強い手の上で踊らされている一つの卵に過ぎない。

 俺はいつ「生まれる」ことが出来るんだろう?

 そうリボーンに言ったら彼は顎を斜め45度くらいに持ち上げてふふん、と
笑った。
「悔しかったら俺を一度・・出し抜いてみるんだな」
「・・一生無理な気がする」
「お前・・」
 それがボスの台詞か、と彼の冷えた視線は言う。
「・・だって」

 君の手のひらの上にいられるならもう、孵化しなくたっていいなんて言ったら
君は、怒るでしょう?

 生まれなくても構わないなんて、言ったら。

「せいぜい落とされないように、しがみ付いて置くんだな」
 ぼーっとしてると殺られるか、振り落とされて割られるぞ、と彼は言う。
俺は両腕をゆっくり、頭の後ろで組んだ。あまりやる気を見せないときの仕草だ。
「・・はーい」

 間の抜けた返事に苦笑する。彼は、本当は・・嬉しそうだった。