君の隣は悪くない
あくびをするとリボーンがなまけてんじゃねーよ、と言った。
ミラノに拠点を移して一年。自転車操業かと思われたボス家業は意外な程順調だ。
優秀なブレーンがたくさんついているからだと、俺は思う。
(そしてたぶん目の前にいる彼もその立役者の一人だと思うけれど悔しいから
それは内緒だ)
「おい、仕事だ」
無造作に差し出された封筒を受け取る。
彼の依頼は何にも増してハードなのであまり受け取りたくは無いが、
断るわけにもいかない。大げさにため息をついた。
「・・今度は何?」
「そんな嫌そうな顔するんじゃねーよ」
「痛っ・・何も鼻摘まなくてもいいじゃない」
「さっさと用意しろ、車を呼んだぞ」
「もう?ちょっと待ってよ、ディーノさんに連絡・・」
「あいつにか?」
「これって南部の部会との会合でしょ?南部はディーノさん顔広いから、根回し。
それから・・フゥ太に連絡して情報聞いて。最初は山本に言ってもらった方がいいね。
日本人の方が警戒されないし。あと・・雲雀さんが捕まえられるといいな・・
裏で動いてもらえると助かる。ランチアさんに留守番してもらって――獄寺君は
俺の秘書件ボディガード。一緒にいないと何しだすか分からないから」
俺が苦笑すると珍しく、リボーンが笑っていた。
こいつが嬉しそうな顔するの・・ひさしぶりだなぁ・・
「何リボーン、にやにやして」
「別に」
彼の右手がするりと伸びて、俺の頬に触れる。何事かと思っていたら――
「・・痛て、だからどうして頬つねる――」
「いいボスには自然と、いい部下が集まるものなんだよ」
「え・・?」
そうにやりと笑ったリボーンの眼がどこか、本当に楽しそうで俺は
彼と仕事が出来て最高に幸せだ、と思った。
最強のヒットマンの至福の表情をこんな間近で見ることができるんだから。
こんなことを言ったらリボーンに怒られるけれど・・
――ボスって・・悪くないね。