[ W教師 ]
「・・ツナーセックスしようぜ」
「・・悪いけど、そんな時間ない」
山本の軽口はいつものこと。でも、明日の会議までに
この資料に眼を通しておかないと家庭教師に半殺しに
されてしまう俺には彼に愛想の入った返事をする余裕さえ
なかった。後半分このかさだけは大きい報告書を読んだら
彼のお願いのひとつくらいは聞いてやってもいいかなと
俺が思っていたところだった――山本の大きな手が俺を
いきなり執務室の椅子から持ち上げたのは。
「ちょっ・・山本、何する――」
「そう言うと思ってさ、助っ人呼んどいたぜ」
俺の言葉を取り違えたらしい彼は、俺を抱きかかえると
そのまま向かいの寝室に直行した。決めたらすぐに動く
決断力は10年前とほとんど変わらない。困っている
ひとをほっとけず、数多くの部活に助っ人に出ていた
気配りの深さも優しさも変わらない・・けれど。
「待って、山本・・まだ、報告書が」
「大丈夫だって、専門家連れてくっから」
イタリアの経済に関して山本自身が詳しいわけでは
ない。その専門家を呼ぶ、というのは彼らしい心配りだが
ベッドに押し倒してシャツのボタンをはずす状態で
言われても・・説得力が乏しすぎる。彼はいったい
誰を呼んだのだろう・・?
「よっツナ。俺に入用だって?」
そう思った矢先ディーノさんがひょっこり寝室のドアから
顔を出した。
「・・ディーノさん・・!」
遅くなってごめんな、と言うとディーノさんは着ていた
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めて微笑んだ。
そのありきたりな所作さえ優雅だった。
「ツナが困ってるって聞いてさ、飛んできた」
その屈託のない笑顔にどう今の状況を説明しようか
俺が返答に迷っている間に、山本は俺のジーンズを下着ごと
足首まで引き摺り下ろした。俺が羽織っているのは肌蹴た
シャツだけだった。
「や、山本・・っ!」
俺が叫ぶと山本は、あらわになった大腿に唇を添わせながら
「講師料は先払いってことで」
と言いぺろりと舌を出して「あ、紹介料はその半分で
いいからさ」と付け加えた。すでに立ち上がり始めた俺の
先端をじっと見つめながら。
「お、準備万端だな、ツナ」
ディーノさんのうれしそうな声に唇を塞がれて、気がつくと
俺は二人の男に上も下も溶けるくらい侵されていた。それが
結局なんのレッスンだったのか、朝山本の腕の中で目を覚ました
俺にも、状況が皆目分からなかった。
『・・けっこう上手だな、ツナ。そう、もっと抉るように・・』
優しく髪を梳いてくれるディーノさんの声が嬉しくて
必死に彼の一部を舐めたこと・・そして弾けた彼のすべてを
飲み干してしまったことを俺は、苦々しい味と一緒に覚えている。
『・・んっ、ツナん中きつくて――最高・・っ』
このまま中に出しても良い?と山本に聞かれて俺は腰を振った。
あんまり彼が突き上げるから俺の分身は搾り取られるくらい吐き出して
しまって・・あんまり行き過ぎるからもう何も出ないんじゃないかって
思った。繰り返し俺に注いだ彼も同じ思いだったのかな・・
とりあえず二人が最強の――とても優しくて熱くて固い・・俺を
泣かせる上で最高の教師だったってことは、たぶん夢じゃない。
そしてそれから魂が磨り減るくらいの勢いで例の資料を読み返したのは
まぎれもない現実だった。