真夏の神様
十年物の扇風機はスイッチを入れると擦り切れるような
電子音を立てた。最初の一ページで根を上げた夏休みの友と
一緒に畳の上に寝転がる。い草の香がして、ほんの少しひんやり
していた。
「山本はさ・・神様って・・信じてるの?」
隣で俺と平行に寝ているクラスメイトに尋ねる。ふと思いついた
疑問。神様がいるのなら手のつけられない量の宿題も何とかして
くれるんじゃないかと、都合のいいことばかりを願ってしまいそうだ。
うーん、と山本は腰を捻る。横向きに寝る。眼が合う。その瞳は
笑っていない。真っ黒な瞳孔が二つ、俺を見つめた。
「・・今は、信じてないかも」
「今は?」
うん、そう――と頷く。今度は笑っていた。至極満足そうな眼だった。
「昔は・・野球の神様がいるんじゃないかと思っていたし」
「うん」
そうだったね。
「今も――神様がいるのかどうかは分からないけどさ」
「うん・・?」
「ツナを――信じてるから」
だから、神様なんていらないんだ・・と君は笑う。
はにかんだ頬が赤いのはたぶん、照りつける日差しのせいじゃない。
太陽がまぶしい振りをして俺は、背中を向けた。
向かいあっていたら「俺も」と、
「神様なんていてもいなくても、山本を信じてるよ」と。
告白してしまいそうだった。